ヘルスケア・イノベーションの投資実績

◎株式上場済み投資案件

ノイルイミューン・バイオテック株式会社
2023年6月東証グロース上場[2021年3月投資]

固形癌に治療効果がある次世代CAR-T細胞を開発している山口大学発のベンチャー企業。癌細胞に対する障害性だけでなく、リンパ節のサイトカイン環境(IL-7とCCL19)を模倣し、固形癌の周囲にリンパ節の様に患者のT細胞を集結・活性化するPRIME CAR-T細胞を開発した。既に、武田薬品、中外製薬、米Adaptimmune社、英Autolus社などにライセンス、武田薬品は2種のPRIME CAR-T細胞の治験に着手している。自社開発したPRIME CAR-T細胞も2022年に治験に着手するところだ。

サスメド株式会社
2021年12月東証グロース上場[2020年12月投資]

デジタルセラピューティックス(DTx)開発とブロック・チェーン技術を活用した新薬支援事業で成長。2022年2月には睡眠治療用アプリの製造承認申請を厚生労働省に行った。癌、腎臓疾患などのDTxも開発中。

株式会社PRISM BioLab
2024年7月東証グロース上場[2021年8月投資]

次世代の創薬標的として注目されている蛋白質・蛋白質相互作用の阻害剤/作動薬を開発するベンチャー企業。蛋白質のリジッドな構造を取らないαヘリックスやβターンを模倣する中分子ライブラリーを開発する独創技術「PepMetics」を誇る。既に、従来、副作用で開発中断が相次いだWntシグナルの特異的阻害剤を開発、エーザイ(抗がん剤)と大原薬品(肝疾患)に導出、それぞれフェーズ2治験まで進み、薬効と安全性が確認されたところだ。前者は免疫チェックポイント阻害剤に対する耐性癌の治療薬、後者は肝線維症の治療薬として市場拡大を期待している。この他、米Genentech社や仏Servier社、ドイツBoehringer Ingelheim社など多数の製薬企業に中分子ライブラリーを導出、プラットフォーム事業も展開している。

◎株式売却等案件

株式会社セルリアン・ビクロ
2023年10月株式売却[2022年3月投資]

世界初のCART細胞製剤「キムリア」の商業製造を担った研究者が設立した企業。細胞医薬のGMP製造に関して、原料の管理から製造プロセス管理、細胞製剤の品質管理、在庫・出荷管理などを切れ目なく統合する管理ソフトを開発している。こうしたソフトは低分子医薬では実用化されているものの、細胞医薬や再生医療ではまだ実用化されておらず、再生医療実用化のアキレス腱となっており、世界的なニーズも高い。今後、細胞医薬や再生医療の市場の立ち上がりによって、市場拡大が期待できる。

株式会社大分大学先端医学研究所[2022年3月投資]

大分大学発のベンチャー企業。独自の化学合成技術によって、近年注目されている蛋白質相互作用の阻害や作動する中分子ライブラリーを開発する。αヘリックスの2回転分を特異的に認識するドラッガブルかつ独創的な化合物ライブラリーである。また、AIを応用し、1000倍以上の多様性を拡大した中分子化合物ライブラリーも開発していた。主要事業を入交生命工学株式会社に譲渡、2023年10月、会社解散。

◎株式未上場投資案件

リバーセル株式会社[2022年12月投資]

iPS細胞由来の他家CA-T細胞やTCR-T細胞の実用化で世界をリードする京大発のベンチャー企業。抗原性を減じた超万能細胞の開発にも肉迫している。同社は次世代の再生医療の産業化と市場拡大の鍵を握る企業である。既に、血液癌などに対する他家CAR-T細胞を大塚製薬と共同開発している。自社パイプラインとして癌に対する他家CAR-T細胞と、感染症の重症化防止を狙う他家CAR-T細胞を開発中だ。

株式会社イーベック[2022年5月投資]

独自のEBウイルス形質転換技術によって、感染や疾病の回復者や健常人のBリンパ球から特異性と親和性が強く治療・予防効果の高い完全ヒト抗体医薬を開発する企業。米国においてサイトメガロ・ウイルス感染症の治療薬としてフェーズ2治験の患者登録を完了、また武漢株からオミクロン株BA.5まで新型コロナウイルスの変異株を中和する抗体医薬も開発済みだ。感染症や自己免疫疾患、癌など幅広い抗体医薬を開発するために、抗体バンクの作製も進めている。

ARC Therapies株式会社
(前Sustainable Cell Therapeutics株式会社)
[2022年5月投資]

国立がん研究センター発のベンチャー企業。固形癌を撲滅する次世代のCART細胞やTCRT細胞を開発している。現在のCART細胞のアキレス腱である治療効果持続の短さに対して、患者体内で粘り強く癌を攻撃し続けるタフな次世代CART細胞を実現する2つの基盤技術を既に保持している。この基盤技術は幅広い再生医療にも展開可能である。再生医療を変化する可能性がある企業だ。

株式会社エヌビィー健康研究所[2022年4月投資]

免疫技術とB細胞の選抜技術を組み合わせた独自のMoGRAAディスカバリーエンジンによって、GPCR(G蛋白質共役受容体)に対する抗体医薬を開発する企業。GPCRは現在市販の医薬品の2割が創薬標的としている。しかし、まだ医薬品が開発されていないGPCRは多数残されている。従来、膜蛋白質であるGPCRに対する抗体の開発は困難を極めていたが、自社技術によってその壁を突破した。パイプラインに10数種以上の抗GPCR抗体がある。国内外の企業に早期技術導出することに加え、自社開発も進めている。

株式会社AutoPhagyGO[2022年3月投資]

ノーベル賞を受賞した東京工業大学大隅良典栄誉教授が解明したオートファジー現象に基づき、神経変性疾患や抗がん剤などの治療薬を開発するベンチャー。オートファジーの活性化はアンチエージングにもつながり、機能性食品、サプリメント、化粧品などの開発も多数の企業と進め、実用化している。国際的に見てオートファジー研究の過半を我が国の研究者が進めており、同社は我が国のオートファジー研究者を糾合したコンソーシアムを形成、最新の研究成果を実用化する体制を敷いている。

リジェネフロ株式会社[2022年1月投資]

iPS細胞技術を基盤として、幅広く腎臓疾患に対する細胞医薬や低分子医薬を開発しているベンチャー企業。当面はiPS細胞由来のネフロン前駆細胞による急性腎不全の治療とiPS細胞由来の腎疾患モデル細胞を活用して選抜した低分子医薬の実用化を急いでいる。中長期的には腎臓細胞由来のエクソソーム製剤開発や腎臓そのものの再生にも挑戦している。この他、肝臓やすい臓の再生医療の実用化も視野に研究開発を進めている。

ルクサナバイオテク株式会社[2021年12月投資]

独自の架橋核酸など修飾核酸技術プラットフォームによって、より安全で薬効の高い核酸医薬を開発する企業。大阪大学発のベンチャー企業だ。我が国は国際的に見ても核酸の化学合成技術の水準が高く、この企業はこうした我が国の技術蓄積を活用して国際的な競争優位性を確保している。国内外の製薬企業やベンチャーに技術導出する他、独自のパイプラインの開発も進める。

セルジェンテック株式会社[2021年10月投資]

脂肪細胞に目的の遺伝子を導入して患者に再移植するex vivo遺伝子治療を開発する千葉大学発のベンチャー企業。脂肪細胞は患者から採取が簡単で、組み換え脂肪細胞は移植後10年以上も目的蛋白質を分泌し、治療効果を示す。AAVの遺伝子治療の対象とならない小児の遺伝子疾患の治療に圧倒的な競争力を持つ。ダイドーファーマ(L-CAT欠損症)、杏林製薬(ファブリー病など)などと希少疾患の治療薬開発で提携している。血友病Aなど他の希少疾患に関しても幅広いパイプラインを持っている。

株式会社遺伝子治療研究所[2021年10月投資]

我が国で唯一、独自のAAVベクター特許を持つ、遺伝子治療開発ベンチャー企業。自治医科大学発のベンチャー企業で、同大学と緊密な関係を保ち、ベクター開発や医師主導臨床治験を進めている。2022年10月にパーキンソン病、2023年1月から孤発性ALSの医師主導治験に着手する。既に、自治医科大学の臨床研究としてパーキンソン病患者の遺伝子治療の経験があり、長期にわたって薬効と安全性が確認されている。同社のAAVベクターは先行する欧米のAAVベクターに比べて、活性が高く、投与量が少ないため、安全性が高いと判断した。米PTC Therapeutics社にはAADC欠損症の遺伝子治療薬「Upstaza」を導出、2022年7月20日に欧州委員会から製造販売認可を獲得した。2023年には2つの新しい遺伝子治療薬の治験着手を計画しており、多数のパイプラインを揃えている。

株式会社ジェクスヴァル[2021年7月投資]

武田薬品のスピンアウト・ベンチャー企業。ドラッグ・リポジショニングにより、希少疾患治療薬の開発を目指す。但し、創業者達が武田薬品の開発中断品から選抜した3つの医薬品候補物質は、希少疾患だけでなく、より市場の大きい中枢疾患や循環器疾患にも薬効が期待できる。更に、同社は武田薬品のドラッグ・リポジショニングの経験とノウハウ、さらに最新のマルチオミックス技術などを組み合わせ、共同開発先の製薬企業の開発中断品から新しい薬効を探索する「AltVal」サービスを展開中だ。既に、第一号の自社開発パイプラインは、豪州で治験フェーズ1に2022年から着手している。

タグシクス・バイオ株式会社[2021年6月投資]

次世代アプタマー、Xenoligoを開発するベンチャー企業。核酸誘導体とミニヘアピン構造を導入することで、特異性と親和性を高めた高機能アプタマーを作製、開発が難渋している第一世代の欠点を解決、克服しつつある。開発が進んでいるインターフェロンγに対するXenoligoで米CAGE bio社と提携、円形脱毛症治療薬として開発に着手した。この他、ハンナ型間質性膀胱炎、ドライアイ、腎不全、紫斑病など、自己免疫疾患の治療薬としてXenoligoのパイプラインを揃えている。一方、Xenoligoをアフェレーシス(血中成分分離)カラムの吸着分子として活用、妊娠高血圧症などの治療用医療機器の開発にも展開している。また、完全化学合成できる利点を活用、抗体を置き換える診断薬としても開発中である。

ユナイテッド・イミュニティ株式会社[2021年3月投資]

腫瘍周辺に存在するM2マクロファージに狙いを定めて、薬剤を送り込むDDS(薬剤送達システム)、プルランナノゲルを開発するベンチャー企業。M2マクロファージは免疫系を抑制し、免疫チェックポイント阻害剤の治療効果を削ぐことが報告されている。M2マクロファージによって癌免疫療法に不応答になったコールド・チューマー(癌)を、プルランナノゲルに包埋した薬剤によって、癌免疫療法で治療可能なホット・チューマー転換する革新的な治療法を開発している。既に、アステラス製薬の米国子会社Xyphos社などと共同開発している。mRNA医薬も含め、バイオ医薬開発のボトルネックとなっているDDSに、画期的なプラットフォームを提供しつつある。

株式会社CureApp[2021年2月投資]

我が国のデジタル・セラピューティックス(DTx)のパイオニア。2020年12月には我が国初のDTx、ニコチン依存症治療アプリ「CureApp SC」を発売した。同社は治療薬に準じた治験を実施、保険収載を獲得した後、治療用医療機器プログラムとして医療機関を通じて処方するDTxの商品化を推進する。2022年9月には高血圧治療用アプリ「CureApp HT」を発売した。現在、NASH(非アルコール性脂肪肝炎、サワイグループホールディングスと提携)や癌治療用のDTx(第一三共と提携)の開発も推進している。同社はプログラムで医療を革新することを標榜、認知行動療法の有効性が示されている疾患領域のDTx開発に積極的に取り組んでいる。